ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
全ての音が消え、静寂が、世界を支配する。
青白い閃光に照らし出されていた空間が、徐々に色を取り戻し始める。
耳が痛くなるような静寂の中。
完全に鬼の変化が解け人身に戻った敬悟は、大鬼が消えた何も無い空間を呆然と見詰めた。
敬悟が死を覚悟した瞬間、目の前に居た強大な敵は何の痕跡も残さず、文字通り消滅してしまった。
それを成したのは、青く光輝く一本の矢。
『敬にぃ、伏せて!』
矢の射られる直前、聞いたのは確かに茜の声だった。
あの矢は、茜の放ったものだろうか?
体力・精神力の極端な消耗で、思考も体も思うように動かない。
それでも敬悟は力を振り絞り、茜の姿を求めて、ゆっくりと視線を彷徨わせた。
百メートルほど離れた場所。
ポツリと佇むその姿を視界に捉えた時、茜は力尽きたように、その場に崩れ落ちた。
床に崩れ落ちたまま、微動だにしない。
「あ……かね?」
敬悟が、傷だらけの体を引きずるように、茜の元へと足を向ける。
その時だった。
何の前触れも無く地面がグラリ、と揺れた。
それはすぐに、地響きを伴う大きな揺れに変わって行く。
バランスを崩して、その場に前のめりに倒れ込んでしまった敬悟の鼻先に、ガラガラと音を立てながら、一抱えもあるような岩が崩れ落ちて来る。
洞窟が、崩落を始めていた。