ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「石ヲ、返セ」
そう言うと鬼は無造作に、茜の胸に手を伸ばした。
目の前に迫る、赤いグロテスクな鬼の腕。
巨大で強靱なかぎ爪。
その爪が目の前に迫っていた。
い……や。
茜は幼子が『いやいや』をするように、首を振った。
いや、実際は振ったつもりで、体は固まったまま動いてはいなかった。
逃げ出したいのに、一目散に敬悟の元へ走って行きたいのに、体が言うことを聞いてくれないのだ。
まるで、『鬼』の魔に魅入られてしまったかのように、目をそらすことも瞬きをすることすらも叶わない。
恐怖に震える茜を嘲るように、ニヤリと鬼が笑った。