ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「もう大丈夫じゃ、心配はいらんよ」
タンカに乗せられた茜に、消防団のロゴ入りの上着を羽織った五十代前半位の厳つい顔の男が、励ますように声をかけてきた。
訛りのきつい尻上がりのイントネーションと、自己主張のある眉毛。この顔には、見覚えがある。
確か渡瀬と言ったか。鬼珂島の話を聞いた、あの漁師だ。
「あんた達、洞窟から出てきたんか? 他に一緒のもんはおるんか?」
渡瀬の問いに、茜は一瞬、何と答えて良いか分からず答えに詰まった。
洞窟の中には、上総の亡骸が残されている。
でも、そのことは、たぶん言わない方がいい。
あの男も、それを望みはしないだろう。
茜は、『いいえ』と首を振った。