ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

里の入り口。


石柱のある高台で野営をしていた捜索隊は、突然の大きな地響きで叩き起こされた。


大地震かと慌てふためいてテントの外に出た一行が目にしたのは、石柱の向こうに突如現れた崩落する洞窟と、洞窟の前に倒れている茜と敬悟の姿だった。


結界の発生装置が破壊されたことにより、鬼隠れの里への道が開かれ、分かたれていた二つの空間は、今完全に一つに融合していた。


「茜! 敬悟!」


お……父さん?


聞き覚えのある声に名を呼ばれ、茜が視線を巡らせると、人垣をかき分けて来る懐かしい父の顔が見えた。


家を出てからそう長い日数が経っている訳ではないのに、まるで何年も離れていたような、そんな気がする。


茜と敬悟が運ばれるタンカを、代わる代わる心配気に覗き込んだ衛の表情が、二人の無事を確認して安心したように、ふっと和んだ。


「仕方の無い子供達だ。あまり心配をかけさせないでくれ。胃に穴があきそうだったよ、私は」


自分の胃の辺りを右手で押さえるジェスチャーをして、二人を見詰めるメガネの奥の瞳は、どこまでも穏やかな色をたたえている。


それはきっと、決して運命に屈しなかった者だけが持つことの出来る、強くて優しい色。


「お父さん……」


「親父さん……」


帰ってきたんだ――。


居るべき場所へ。


生きるべき、場所へ。


「二人とも、お帰り。でもまずは、保護者としての権利を行使させて貰おうかな」


衛はニコニコ笑顔でそう言うと、右手でグーを作り、『ハー』っと拳に息を吹きかけた。


そして、悪戯をした幼い頃の二人を叱る時に良くしていたように、『ごちん、ごちん』と、軽い『げんこつ』をお見舞いしたのだ。

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