ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
その力は、強くも弱くもない。
だが、振り払って行く事が敬悟には出来なかった。
「お前が本当の『神津敬悟』ではないことは、最初から分かっていたよ」
「ええっ!?」
まるで世間話をするような気楽さで、サラリと重大事項を言った父のセリフに、茜が驚きの声を上げてその場に固まる。
ニコやかな父の顔と、茜同様やはり驚いてに固まっている敬悟の顔を、交互に覗き込む。
当の敬悟は言葉もなく、信じられないと言う面持ちで、ただじっと衛の顔を凝視していた。
「敬悟が家に来たとき、明日香が言ったんだよ」
在りし日の妻との思い出を懐かしむように目を細めて、衛は穏やかな笑みを浮かべる。
『ねえ、あなた。この子は本当の敬悟君じゃないけれど、きっと茜の良いお兄ちゃんになってくれるわ。これは私の予言。だから、この子は神津敬悟として育てましょう』
スヤスヤと眠る敬悟のあどけない寝顔を見詰めながら、まるで最高の悪戯を思いついたように、楽しげに笑った妻。
最愛の女性の言葉に、衛が異を唱えるはずもなかった。