ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「そう、そう。育てた私が言うんだから間違いない!」
茜が敬悟の顔を覗き込み、ニヒヒと、明るい声を上げる。
「……俺は、お前に育てて貰った覚えは無いぞ」
そう言って顔を上げた敬悟の目に、もう涙の影は見えない。
「茜の『オムツを替えた』覚えはあるけどなっ!」
まるで悪戯小僧のように『ニカッ』と満面の笑顔でそう言い放つと、敬悟は車に向かって駆け出した。
「敬にぃっっ!!」
茜が、ふくれっ面をしてそれを追って行く。
「やれやれ。茜も少しは、大人になったと思ったんだが……」
器用なようでいて、実はかなり不器用な甥っ子のこれからの苦労を思い量り、衛はため息混じりに呟いた。
遠くでアブラゼミが一斉に鳴き始める。
優しい風が、三人を包み込むように吹き抜けていく。
振り仰いだ青い空には白い入道雲。
七月。
夏は、まだ始まったばかり。
今日も暑い一日になりそうだった。