ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「何だか制服がホコリっぽいな。昨日こけたとき、泥はねしたのかな」
「え?」
違う。
違うよ敬にぃ!
ピントがずれてるよ!
何をどう言って良いのか分からず、茜は金魚のように口をぱくぱくと開け閉めした。
「クリーニング出さないとダメだな」
いつもと変わらない敬悟の態度に、茜はますます頭が混乱してしまう。
制服のシワやクリーニングの心配よりも、もっと重大事件があったはずだ。
混乱の極地で言葉が出ない茜の様子を『反省』と取ったのか、敬悟は『しょうがないなぁ』と言うように軽く溜息を付いて、茜の頭をポンと一叩きした。
「いいから、さっさと着替えて降りて来いよ。朝食……、もう昼食か。出来てるから」
そう言って部屋を出て行こうとする。
ちょ、ちょっと待って!
慌てふためいた茜はベットの上から飛び降りて、敬悟の腕をむんずと掴んだ。
「な、なんだ、どうした!?」
いきなり進行方向と違うベクトルが体にかかり、バランスを崩してよろけた敬悟は、目を丸くしている。
「敬にぃ! 昨日、鬼、見たよね!?」
やっと口を飛び出した茜の声は、ワントーン跳ね上がって裏返った。