ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「茜!」
不意に、静かな待合室に聞き慣れた声が響いた。
敬にぃ……?
ゆっくりと声のした病院の入り口の方に視線を巡らせると、茜の予想通りの声の主が慌てた様子て駆けてくる姿が見えた。
茜は、パタパタと忙しない足音が近づいてくるのを、ただ座ったままで聞いていた。
「茜、大丈夫か!?」
弾む息の下、敬悟が腰を屈めて茜の顔を覗き込む。
心配げに自分を見詰める、優しい眼差し。
その眼差しを感じて、茜は鼻の奥にツンと熱いものがこみ上げるのを感じた。
凍り付いてしまっていた感情が一気に溶け出していく。
「どうしたんだ? 一体何があった?」
息を整えながら問いかける敬悟の声音は、幼子に話しかけるように穏やかだ。
決して詰問するようなことはしない。
穏やかで優しい。
それが、茜の従兄・神津敬悟という青年の人となりだった。
――敬にぃなら、分かってくれる?
信じてくれる?
「敬にぃ……」
でも、何をどう言えばいいの?
色々な感情があふれすぎて、声が震えてしまう。