ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

今まであったことすべてを茜が話し終わると、敬悟は「そうか……」と、それだけを呟いた。


ポンポン、と茜の頭に手をやると「それで、茜はどうしたいんだ?」と問うた。


その瞳には、疑心も揶揄も無い。


いつもの穏やかで優しい色をたたえている。


「信じてくれるの? こんなムチャクチャな話……」


絶対信じてもらえないと思っていた茜は、正直、敬悟の反応に驚きを隠せない。


自分が敬悟の立場だったら、到底信じられないだろう。


そもそも『鬼に襲われた』と聞いたところでアウトだ。


はっきり言って正気を疑う。


それを信じようと言うのか、この人は。


茜は、穴があくほど敬悟を見詰めた。


その視線の先で、ふっと、敬悟の表情が和んだ。


「俺の大事な従妹は、ドジでおっちょこちょいだけど、嘘つきじゃないからな」 

 
そう言って、茜の髪をくしゃくしゃっとかき回す。


温かい、大きな手。


それは、幼い時からいつも変わらずに茜を守って来てくれた、掛け替えのない手だった。


< 67 / 349 >

この作品をシェア

pagetop