ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
今まであったことすべてを茜が話し終わると、敬悟は「そうか……」と、それだけを呟いた。
ポンポン、と茜の頭に手をやると「それで、茜はどうしたいんだ?」と問うた。
その瞳には、疑心も揶揄も無い。
いつもの穏やかで優しい色をたたえている。
「信じてくれるの? こんなムチャクチャな話……」
絶対信じてもらえないと思っていた茜は、正直、敬悟の反応に驚きを隠せない。
自分が敬悟の立場だったら、到底信じられないだろう。
そもそも『鬼に襲われた』と聞いたところでアウトだ。
はっきり言って正気を疑う。
それを信じようと言うのか、この人は。
茜は、穴があくほど敬悟を見詰めた。
その視線の先で、ふっと、敬悟の表情が和んだ。
「俺の大事な従妹は、ドジでおっちょこちょいだけど、嘘つきじゃないからな」
そう言って、茜の髪をくしゃくしゃっとかき回す。
温かい、大きな手。
それは、幼い時からいつも変わらずに茜を守って来てくれた、掛け替えのない手だった。