ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「茜ちゃん? どうしたの?」
元気な姿を見慣れている山田さんは、いつになく暗い茜の様子に小首を傾げた。
腰を屈めて、茜の顔を覗き込んでくる。
だが茜には、上手く説明ができなかった。
お母さんに会いたい。
会って、いつものようにお話しをしたい。
絵本を読んで貰いたい。
でもきっと、いつのもようには笑えない。
心配をかけたくない。
でも、会いたい。
そんな想いの狭間で、幼い心が、風に吹かれる木の葉のように揺れていた。
「茜? どうしたの?」
不意に、茜を呼ぶ声が、閉ざされたままの病室のドアの向こうから飛んできた。
少しトーンの高い、優しい声音。
『大好きなお母さん』の声。
茜の鼓動がドキドキと、ステップを踏む。
「ほら、お母さんがお待ちかねですよ」
山田さんに手を引かれ、茜はおずおずと病室に足を踏み入れた。