ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
車から降りた茜と敬悟は、多少警戒しながら黒ずくめの男に歩み寄った。
玄鬼も、茜の足下にちょこまかと付いてきている。
「橘君?」
背中を向けてしゃがみ込み『バイクの点検』に熱中している風を装っていた男が、茜のかけ声にギクリと動きを止めた。
そのまま金縛りにあったように微動だにしない。
「橘君だよね?」
今度は茜に至近距離で顔を覗き込まれた男は、観念したように立ち上がった。
かなりの巨漢だ。
敬悟もさほど身長が低い方ではないが、この男は更に背が高い。
茜からすれば、見上げるような大きさだ。
筋肉質のがっちりとした体は、スポーツ、おそらくは格闘技で鍛えていることを容易に想像させる。
男は、ゆっくりとフルフェイスのヘルメットを外した。
中からは、茜の予想通りの見慣れたクラスメイトのバツの悪そうな渋面が現れる。
「ちぇっ。見付かるの早すぎだよ、俺……」
そう言って、ぽりぽりとスポーツ刈りの頭を掻きながら、自己主張のある眉根を寄せた。
男の名は『橘信司』。
あの時。
親友の真希が弓道部の部室で鬼に変化したとき、目撃していた茜のクラスメイト。
そして、真希の彼氏でもあった。