ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
明日香に優しく手招きをされ、茜はおずおずとベットサイドに歩み寄った。
だが、顔が上げられない。
自分の足下、ピンクの子供用のスリッパのつま先をただじっと見詰める。
「今日はお母さんに、『ただいま』をしてくれないのかな?」
いつもなら茜は病室に飛び込むように入ってきて、すぐに明日香に抱きつき『ただいま』をする。
一緒に暮らせない母娘の唯一のスキンシップの瞬間。
茜にとっても、母の体温を感じられる一日で一番嬉しい時間だったのに、今日はそれすら忘れていた。
母を心配させまいとして、余計に心配させていることを感じた茜は、母の言葉にハッとして顔を上げた。