ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
「ほう、いへはさ」
「飲み込んでから話せよ。行儀悪い」
車に戻るなりオニギリを頬張りながら何やらもごもご話し出した茜に、ため息混じりに敬悟が釘を刺す。
「ふ、ふぁ~ひっ!」
茜はまだほの温かいペットボトルのお茶で、ぐびぐびと口の中のご飯を飲み込んだ。
「そう言えば赤鬼のこと、敬にぃは覚えてなかったでしょ? あれって、どうしてかな? 本当は夢だったとか……ないよね?」
茜の質問に、敬悟が考え深気に目を細めた。
「……たぶん、記憶の操作とか、そう言うんじゃないか?」
記憶の操作。
あの鬼は、人間の記憶を自在に操れるような力を持っているのだろうか?
それならなぜ、その力を使って石を奪っていかなかったのだろう?
そもそも『石を返しに来い』と言いながら、その場所を教えないのが茜には疑問だ。
ゴクリ――。
茜は唾を飲み込み、自分の膝の上で美味しそうにオニギリをぱくついている子猫に視線を落とした。
その視線に気付いた玄鬼が顔を上げる。
「なかなか美味しいぞ、このツナマヨというのは」
唯一知っていそうな玄鬼は、この話題に乗る気はさらさらなさそうに、喉をゴロゴロと鳴らして舌なめずりをしている。
どうやら、答えを知るには『キガクレノサト』を見付けるしかなさそうだ。