ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
その頃。
茜の父、衛(まもる)は、勤務先の大学の研究室にいた。
十二畳ほどの室内には4つのスチールデスクと、壁一面の書籍。その他、発掘品のサンプルなどが所狭しと置かれていて雑然としている。
通常なら3人のスタッフが部屋に詰めている時間帯だが、それぞれ所用で出かけていて今は衛ともう一人、研究室主任の有沢由美(ありさわゆみ)がいるだけだった。
「どうです教授。連絡、付きましたか?」
「……いや」
自分のデスクでしきりと携帯電話を操作していた衛は、由美の質問に首を振ると、諦めたように携帯電話をパタンと閉じた。
朝から何度も、茜と敬悟の携帯に代わる代わるかけてみたが、どちらも『電源が入っていないか電波の届かない――』のアナウンスが、虚しく流れるだけだった。
おそらく、連絡されることを予想して電源を切っているのだろうと衛は思った。
「……という訳で、私は当分大学を休む事になりそうです。申し訳ありませんが、後のことを頼みます」
本当に申し訳なさそうに言う衛の言葉に、由美が神妙に頷く。
「ご心配なさらずに。こちらは、何とでもしますわ」
そう言って頼もしく笑った。