ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】

今年三十歳になるこの有沢女史は、優秀で有能だ。


ショートヘアに黒縁のメガネ。


意志の強そうな瞳が印象的な、なかなかの美人である。


闊達で姉御肌的なその性格は、研究室のスタッフやゼミの学生にも人気があった。


優秀であることが必ずしもイコール有能とは限らないのが世の常だが、この人に任せておけば心配はいらないだろう。


事務処理能力は、衛よりも遙かに優れている。


衛は、有沢由美に絶大なる信頼を置いていた。


「宜しく頼みます。何かあったら携帯に連絡を入れて下さい」


「はい、承知しました。それにしても……」


いつもなら端切れの良い物言いをする由美が、腑に落ちない様子で言葉を濁す。


「何か気になることでも?」


「いえ。敬悟君らしくないと思いまして。なんだか『家出』という単語が似つかわしくないなぁと」


ここの学生で、考古学専攻でもある敬悟のことは由美も良く知っている。


何より衛の甥っ子で、発掘にも何度も同行している。


真面目で優秀な学生、それが敬悟に対する由美の印象だった。


「ああ……。そうですね」


衛は、そう言って苦笑した。


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