虹の中の観覧車
「美羽、眠い?」


「ううん。大丈夫。起きてるよ。」


「そ?眠かったらシート倒しな。着いたら起こすから。」


「うん。」


右手を伸ばして私の頭をくしゃっと撫でた。


左ハンドル……つまり、外車。

子どもの頃、大好きだった従兄弟のお兄ちゃんの影響で、ずっと憧れていたらしい黒くて可愛いこの車が納車された日。

彼は、緊張しながらやってきて、


「嬉しすぎて怖い。」


と私の手をぎゅっと握った。


「だから、そばで見てて。」


私を助手席に座らせ、大きな深呼吸をした。

とても静かに、優雅に進む。


「最初に美羽を乗せたかったんだ。」


そう言って、やっぱり右手を伸ばして私の頭をくしゃっと撫でた。



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