虹の中の観覧車
「良かったらお店に飾って。」


渡した花束を、嬉しそうに手にした。

朝の冷たい空気に甘い香りが混ざる。


「もうじき………だね。」


花束に鼻先を埋めながら呟いた。


「美羽?」


目を瞑り、花の薫りを楽しむ。


「甘い……美味しそう。」


「食べてみる?」


「ん〜、虫歯になりそうだね。でも凄く良い香り。ありがと。大事に飾る。」


にっこり微笑んだ朝。

別に、誕生日を祝ってほしいわけじゃない。

俺の部屋にあっても結局枯らしちゃうから。

ただそれだけの理由。

俺よりも、美羽の方が似合うから。

ただそれだけの理由。

なのに、その花束は、彼女の心を不安でいっぱいにするのに、充分な理由を持っていた。


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