虹の中の観覧車
思っていたより、素直に受け止めてくれたように見えたから。

笑顔で別れた朝。

なのに、時間が立てばたつほど気になって仕方がなくなった。


「瞭、この花束どうする?」


マネージャーの中村さんが、移動車のワンボックスの後ろに並べられた花束とケーキの箱を眺めて言う。


「任せていいっすか?俺、昨日ひとつもらったし。枯らしちゃうの目に見えてるから。あ、塁、持ってく?」


前の席で半分夢の中の相棒に声をかけた。


「食えないもんはいらねぇ。」


「じゃ、事務所持ってくとするか。」


申し訳ないけれど、家に連れてかえってはやれない。


「お願いします。」


ドン、と重い音を立ててしまったドア。

俺の心も一緒に重い音を立てた。



< 9 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop