虹の側に
「はい。熱、測って。」


差し出された体温計。


「測って。」


「え?……きゃっ。」


体温計を持つ手をぎゅっと引き寄せ、ベッドに倒れ込ませた。

一瞬のうちに俺に覆い被さってしまい、わけがわかっていない様子に追い打ちをかける。


「体で測るってのはどう?」


熱に浮かれたとはいえ、よくこんな台詞が言えたもんだ。

しかもだ。

ついでに体を入れ換える元気まで……。

馬鹿じゃなかろうか……。

今更後悔したって遅い。

俺を見上げる瞳が、一気に強くなる。

真っ赤になっているくせに、その瞳は明らかに………怒っていた。


「…………ねぇ?」


「ん?」


「どいて?」


「いや。」



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