虹の側に
体の熱さが少しも退いていないのを自分でも自覚しながらシャワーを終えた。

それでも、頭は少しすっきりした。

目は覚めた。

腰にタオルを巻いたまま、濡れた髪をガシガシと拭く。

鏡に写る情無い顔。

慣れたはずのアイドルスマイルも、なんだかひきつって……。

結局は溜め息をつきながら、コーヒーでも飲んで着替えてしまおう、なんて適当に頭の中で段取りながらリビングへ続くドアを開けた。


「え……………?まだ居たの?」


いつものお気に入りのソファに体をすっぽりと埋めた美羽。

彼女が振り向いたその瞬間、俺が発した台詞。


「まだ居たの?」


しまった……と思った時にはもう、浮かんでいたはずの優しい微笑みは消えていた。




< 16 / 35 >

この作品をシェア

pagetop