虹の側に
いや、消えたのではない。

正しくは、消えた微笑みはすぐにその瞳に、唇に戻ってきた。












嘘の微笑みに姿を変えて……。









「良かった。起きれるんだね。」









そう言って立ち上がる。


「美羽、あ…」


「じゃあ、私、帰るね。仕事行くんでしょ?」


「あぁ……もうす…」


「休めないもんね。うん。私も行かなきゃ。」


散歩にいつも持って来ている携帯と小銭入れを入れた小さなトートバッグを手にした。

そのまま俺の横を黙って通り過ぎる。

そして、俺の背中を過ぎた瞬間、嘘の微笑みは、役割を無くす。

残ったのは、次に振り向くために作る、極上の嘘の微笑み。



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