虹の側に
体は楽になったけれど、食欲が戻らない俺は、食事の大部分を残し、病院を後にした。


「1時にくるから。ふらふらすんなよ?」


中村さんは悪戯っこのようにちょっぴりニヤつきながら、運転席から外にいる俺に向かって手をあげてから車を走らせた。

ふらつくって……もう8時。

俺がふらつきたい時間はとっくに過ぎてる。

車の中で確認した携帯には、塁からの冗談満載のちっとも心配なんかしてないオーラを必死に作り出したメールが二件。

俺の入院を聞いた先輩や後輩からも何件か。

退院したことを簡単に知らせるメールを返した。

全員同じ文面で申し訳ないが……。

問題は、これから。

予定外の出来事を説明しなけりゃならない相手がいる。


< 28 / 35 >

この作品をシェア

pagetop