虹の側に
朝の散歩
朝の8時。

通勤通学途中の人々がせわしなく行き交う。

とても散歩などと優雅なことを言っている雰囲気はどこにも見当たらない。

そんな中、ゆっくりと歩く。

目深に被ったキャップを確認しながら、周りの空気から身を隠すように歩いた。

細い小路に入ると、途端に静かな世界になる。

慣れた道を少し行けば、二人の大切な場所がある。

キャップのツバを少しあげ、誰もいないその場所へ足を踏み入れた。










君に伝えたい想い。









言葉にすれば、嘘臭くなる気がして怖かった。

言葉にしなければ、届かない気がして怖かった。




だから、今、感じたままを君に伝えたい。

小さな背中をしゃんと伸ばして空を見つめる君に。



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