虹の側に
ベッドに腰を下ろすと、我慢していた溜め息が溢れ出た。


「はぁ……。」


「熱………体温計持ってくる。」


部屋から出て行った。

開けたままのドアの向こうで、救急箱を探す。


「無いよ……救急箱。」


「洗面所。」


聞こえた独り言に返事をする。


「洗面所!うん。下の扉の中だ。」


自分で探し物の場所を詳しく言い当てながら洗面所へ向かっていく。

パタパタと足音が動き回る。

とりあえず、さっき脱いだスウェットを履き直し、ベッドに潜った。

病人だと意識した途端、気持ちが負けていく。

だるさが増していた。

それでも、パタパタ言わせて近付いてくる足音には馬鹿みたいに頭が反応する。



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