空中ブランコ
“エっ?”
メリ―にかけていた術が、軽い音と共に弾かれる
「いい子ですね」
満足そうに小さく微笑むシルディの先で、メリ―が立ち上がる
目は虚ろで、暗闇を捕らえてる
“何ヲしタ…?”
番人の声に戸惑いが見えたのは、気のせいではないだろう
「彼女は私が差し伸べた手をとったまで……」
“悪魔だけノ術ダゾ!!バンパイアが解けルハズがナイ!”
「心外ですね。
悪魔の術は天使なら解けるのに、その天使を取り込んだバンパイアにお前の術が解けないはずがないだろ?」
全てに理解ができたんだろう。番人の息が詰まる
「そもそも、お前も元老員も俺を甘く見過ぎだ。腹が立つ…」
威圧感と共に、先程とは比べられない亀裂が再び大気に走る
“グッ…アァ゛―!!”
一段と深い亀裂が走ると、番人が悲痛の声をあげる
「天使の力とバンパイアの術は、敵なしと謡われる悪魔でも辛いですか?」
些か楽しげな声
“ァ゛…”
「俺は公爵の地位だ。侯爵、伯爵の力などと一緒にするな」
開いた大気の亀裂が修復していく
それに飲み込まれるように、番人の声も遠くなる
“ソの…娘ハ……っ……、─────────。”
絶えた番人
「はっきり言ってから、くたばれよ。」
シルディが、番人の言い掛けた言葉を理解するのはこれからもっと先のこと