掌に収まる程、小さな物語
その人はいつも僕に食事を作ってくれた。その人が作ってくれた食事を食べながらテレビを見ていると、〔連続通り魔事件〕というニュースが流れた。犯人はすれ違いざまに隠し持ったナイフを突き刺すという犯行を繰り返し、未だ捕まっていないらしい。
「食事が不味くなるからチャンネルを変えよう。」と言いながらリモコンのスイッチを押すと、今度は〔有名な漫画家が山で転落死〕というニュースが流れた。僕らは顔を見合わせて苦笑いすると、テレビの電源を切った。あの人は「どうぶつ奇想天外が始まるまで見るものないなぁ」なんて呟きながら寝転がった。
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