♀スクール・デイズ♂
私はパジャマ姿のまま、慌てて家の外へ出た。


「……やあ」


私の顔を見ると、にっこりと笑って片手を挙げた彼。

「――何が“やあ”よ。病人のくせに」


「もう熱下がった」


熱は下がったといっても……病み上がりの芳くんを、外にいさせるわけにはいかない。


一瞬、困惑したけれども――。


「私の家、入りなよ。また具合悪くなったら大変だから」


「えっ――。家、って。大丈夫なの?」


「うん。お父さんは店に出てるし、お母さんは眠ってるし。たぶん大丈夫」


そう告げると、私は有無を言わさず先だって家の中に入って行った。


何よりも、芳くんの体が心配だった。


幸い、私の6畳の部屋は、今、そんなに散らかっていないし。


おずおずと芳くんは、私の後についてくる。


いっちょまえに、緊張感と謙虚心は持っているらしい。


「どうぞ」


足音をなるべく立てずに階段を上ると、部屋のドアを開けて私は芳くんを招き入れた。


「――女の子の部屋って、初めて」


「うん。――入って」


こんな時間に、男の子を自分の部屋に入れているだなんて、お母さんに気づかれたら、とんでもないことになるだろう。


だから、私は部屋のドアの前で戸惑っている彼をせかした。


そして、彼は入ってきてくれて、扉を閉めて、ほっと一息をついた。



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