♀スクール・デイズ♂
「青でまとめてるんだな」

「……ああ、うん。青、好きなの」


カーテンは水色に、白い水玉模様。


ベッドカバーも、枕も、ブルーとネイビーブルーのストライプ。


カーペットも、空色。


――ブルーって、精神安定の色なはずなんだけどな。


そんな色に囲まれても、寝つきが悪いってどんだけよ。


芳くんは、青に囲まれた、白いテーブルの前にちょこんと正座した。


黒いダウンジャケットに、Gパン姿。


――あ、私、パジャマ姿だった。


まあ、芳くんが気にしてないみたいだから、いいか。


「ホットミルク、飲もうと思ってたところなの。芳くん、牛乳、大丈夫?」


病弱な彼のことだ。牛乳で、お腹こわす性質(たち)かもしれないから、一応確認しておいた。


「大丈夫」


まだ“女の子の部屋”に緊張しているのか、強ばった表情でぽつりと呟いた。

私は頷いて、芳くんをひとりにして部屋を出た。


パタンとドアを閉めて――私は、くくく、と笑ってしまった。


芳くん、カワイイ――。


あんな縮こまっている芳くん、初めて見る。


普段から、ああやって謙虚で、おとなしければいいのに。


ふふふ――私はキッチンでミルクパンで牛乳を温めている間中、彼のあの態度がカワイくて仕方なくて、笑いが止まらなかった。


――だけど。


赤いギンガムチェックと、青いギンガムチェックの、ふたつのマグカップをトレイにのせて、部屋に戻ると――。


――前言撤回――。


芳くんは、脱いだ自分のダウンジャケットを枕にして、私の本棚からマンガを取り出したらしく、それを仰向けになって読み耽っていた。



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