♀スクール・デイズ♂
「――何、笑ってんの?」

「ううん。何でもないの」

また、“カワイイ”なんて言ったら、スネるだろうから、そこはごまかした。

「それにしても、あれだな。医者ってカッコいいな」

「早速マンガに影響されてるの? 何? お医者さんになりたいの?」


「俺、ヤダよ。痛いの」


「別に、お医者は痛くないでしょ」


「そうか――。医者っていう選択はないな、俺。マンガは平気だけど、医療モノのドラマとか、手術シーンとか生々しくてダメ。怖い」


そう言って、唇をとがらせて身震いをしてみせる。

「ドラマかぁ。テレビ自体、あんまり見ないからな」

と、私の言葉に芳くんは辺りをキョロっと見渡して、


「そういや、部屋にテレビないね」


と言った。


「うん、マンガとか、本があればテレビはいらない」

「俺はテレビっ子だよ。テレビばっか見てる」


「どんなの?」


「んー。お笑いとか、ドキュメンタリーとか、何か元気もらえるやつ」


「元気もらえる……って、普段どんだけ元気ないの」

私は噴き出した。


「マイナス思考だからさ、部屋でひとりとか淋しーんだ」


「ああ、だから――」


こんな夜中に、私のところへ訪ねてくるのかな。 

「ん?」


「いや、うん。その気持ち、解るよ」


その考えを口に出すのがおこがましくて、私は言葉を濁した。


ちらりと芳くんを見ると、カップを手にしたまま、目を瞑っていた。


「どした?」


「いや、何だか眠くなってきた。――ミルクのせいかな」


「ここで寝る?」


眠いところ帰して、原付で事故ったら大変だ。


ひと眠りしてからの方が、いいんじゃないかな?


だけど――。


高校生の男女が、同じ部屋で眠るなんて、不謹慎かしら?


だけど、別に私たち、そういう関係じゃないし……。


< 42 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop