♀スクール・デイズ♂
「――悪いが、彼女の頼んだアイスコーヒーが温まってしまうので、――失礼する」


声がしたかと思うと、またまた、腕をつかまれた。

鏡介とは違う、優しくてあたたかい感触。


「カズくん!」


神話にでも出てくるような、端正な顔立ちをますます硬い表情にして、私を男子の群れから引き抜いてくれた。


あ――。


私の危機を感じて、助けてきてくれた――?


そんな思いを、感じた。

「コーヒーなんて、いいじゃん。ドーナツなら、ここにたくさんあるし」


「食べて食べて」


男子校生たちは、そうまくしたてる。


「え、えっ、と……」


「――ララちゃんは、チョコレートのドーナツしか、食べない」


カズくんは毅然と言った。

あ――。


私が頼んだドーナツは、全てチョコのやつだってこと、見てたんだ。


ちらりとここのテーブルに載せられたドーナツをみたところ、チョコのかかったドーナツを頼んだひとはいないみたい。


「じゃあな」


今度は、カズくんに強引に腕を引かれ、その鏡介の取り巻きから逃れることができた。


鏡介は腕組みをして、不気味な笑みを浮かべて、ここは黙っていてくれた。


「――どしたの?」


と、窓際の席に戻ると、ドーナツの砂糖で口の周りを白くさせてた芳くんが、きょとんとしていた。  

「いや――オオカミがいたもんで」


と、ことの真相は話さず、カズくんは席に着いた。


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