♀スクール・デイズ♂
席に関してはアンラッキーだったけれど、担任の先生には恵まれたかな。


ナカヤマ先生はそんな生徒たちの盛り上がりを制するように言った。


「俺はな、スパルタだからな。ちゃんと姿勢を正して生活するように」


なんてこと言ってるけれど、ナカヤマ先生の口元はニヤついている。


そんな厳しい先生だなんて、誰も思っちゃいない……もちろん、ナカヤマ先生自身もそうみたい。その不敵な笑みを見て解る。


先生の言葉に、前の席の男子2人も笑って手を叩いていた。


「それじゃあ、これから始業式だからな。出席番号順に廊下に並ぶように」


出席番号順……やっとこれで女の子に紛れることができるわ。


そう、思った私は甘かった。


遅刻ギリギリだったし、席は男子寄りだったから、女の子はもうすでにいくつかのグループが出来上がっていた。


女子の間に挟まれていたのなら、どこかの会話に混じることができたのかもしれない。


だけど、並んだのは順番で列の最後尾。


ひとつ前の女の子は、すでに仲良くなった子たちとはしゃいでいる。


私の後ろには、もちろん生徒はいない。


完全に、蚊帳の外だ。


私は肩を落とした。 


始業式が終わっても、私は女子とは誰とも言葉を交わすことができなかった。


教室へ戻る時に、ナカヤマ先生に、“あんな席になってすまんな”って声をかけられた。


だけど“全然気にしてないですよぉ”なんて、笑顔で応えてしまった。


“足……ケガしたのか”との問いかけにも、“平気です”と言った。


――今すぐにでも、席替えしてくださいって頼めばよかった。


その後も、私は誰とも話せないでいた。


誰も私に話しかけようとはしてこなかったし、私もできあがってしまっていたグループの中に意を決して入り込んでいく気力もなかった。


いーもん。ひとりでも。

私は開き直ることにした。


一日の終わりのHRも、教室掃除も私はぽつんとしていた。


ひとりって、不思議。


ずっと黙っていると、こころまで静かになる。


気分が沈んでくる。


私って、こんなにおとなしい性格だったっけ?


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