思いだけでも伝えたい(短編)
樋口の手は退けられて、私は一歩下がる。
この雰囲気は駄目
「わ、私もね、樋口に見てもらいたいものがあってね」
この雰囲気は駄目潰さなきゃ
私が思い伝えちゃわないように潰さなきゃ
樋口に見せたいものなんてないのに後ろのロッカーに置いた鞄のところまで行こうと一歩踏み出した。
「神谷っ」
その一歩は呆気なく引き戻されて、振り返ると困った顔した樋口がいた。
掴まれた腕が熱い。
お願い離して
言っちゃうよ、壊れちゃうよ
好き
好き
大好き
君の笑顔がもっと知りたいよ
お願い離して