思いだけでも伝えたい(短編)


「って、近いんですけど」



顔を背けても横目にうつる松矢のドアップ。



松矢はニシシと笑っているんだと思ったら、案外真剣な顔付きだった。




「好きだ」



………………え?



考える間も無く、松矢の手が私の後頭部を支えて固定した。



顔が近い


どうなるのよ

キスしちゃいそうだよっ





駄目だよ



そう思ってもだんだんゆっくり近付いてくる松矢。



駄目だ駄目だ

だって私、樋口が好きなんだもん!!




次の瞬間には松矢を突き飛ばしていた。



「ごめんなさい。でも自分の気持ちに気付けました。ありがとう」



そう言い切ると急いで階段を降りた。




樋口が好きだから迷うことは何もないよね




< 18 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop