思いだけでも伝えたい(短編)
「って、近いんですけど」
顔を背けても横目にうつる松矢のドアップ。
松矢はニシシと笑っているんだと思ったら、案外真剣な顔付きだった。
「好きだ」
………………え?
考える間も無く、松矢の手が私の後頭部を支えて固定した。
顔が近い
どうなるのよ
キスしちゃいそうだよっ
駄目だよ
そう思ってもだんだんゆっくり近付いてくる松矢。
駄目だ駄目だ
だって私、樋口が好きなんだもん!!
次の瞬間には松矢を突き飛ばしていた。
「ごめんなさい。でも自分の気持ちに気付けました。ありがとう」
そう言い切ると急いで階段を降りた。
樋口が好きだから迷うことは何もないよね