思いだけでも伝えたい(短編)
学校の玄関まで行くと足が止まってしまった。
樋口が一人で玄関に立ってる。
幸い私の方を向いてはいなかったから気付いてないみたいだけど、
ずっと待ってたのかな
まだ少し寒いから、樋口は手を摩ってからズボンのポケットにいれた。
私の足が動く
止まらない
このままじゃ体当たりしちゃうよ
そんな勢いで、ガバッと樋口に後ろから抱き着いた。
「わっ」
少しよろめいて驚く樋口。でも、すぐに私の方を向くとギュッと抱き締めてくれた。
「ひゃあっ」
それがあんまりに早かったから今度は私が目を見開く。
「あ、あのね。返事する」