思いだけでも伝えたい(短編)
樋口の胸に手を置いて少しだけ距離を取った。
顔があり得ないくらい赤いのがわかる。
「早く」
急かすように樋口が笑って言った。
ううう
樋口は私のこの様子を随分楽しんでいるようで、にこやかだ。
私は意を決めて樋口と目を合わせた。
「好きです。
思いだけ伝えるなんて駄目なくらい
私樋口が好きだ」
そう言うと樋口は少し驚いてた。
「自棄に急に素直になったね」
「うん。松矢にキスされそうになって気付いたんだ…………あ」
言ってすぐ口を手で押さえた。
いくら私でも今の発言がいけなかった事くらいはわかる。
現に樋口は不機嫌そうだ。