放課後ハニー
「惜しかったね、最後の問題。途中までいい線だった」
渡された答案には、最後の問いの端に『惜しい!』と赤で書かれている。
どうやら途中までの点は加算されているようで
それも全部合ってれば満点だったらしい。
ざっと見ながら席に戻ると、智香がニヤニヤしながら後ろを振り向いた。
「惜しかったんだ?」
「うーん…そうみたい」
「わ、93点。物理でその点数って凄い」
「そりゃ相応の努力はしてますから」
「予備校にも行かず大したもんだわ…ちょっと分けなよ」
「どうやって」
お菓子分けて、と同じような口調で言うから
思いがけず吹き出してしまった。
「光谷智香」
「あ、はぁい」
智香を呼ぶ声が、私達のおしゃべりを遮り
私は改めて答案を見る。
と、同時に走り書いたような文字に目がとまり、二度見した。
『惜しい』と書かれた赤の更に端に
鉛筆書きで携帯のものらしきメールアドレスが記されている。
「んんー、ザ・平均って感じっぽいなぁ…ねぇ友響、問3で…」
「え?問3?」
「…どうかした?採点ミスでも見つけた?」
「違う違う。で?問3が何?」
…危ない。
一体何考えてるわけ?
全くなんてものを残してくれたのあの男は…
その場所を不自然にならないよう腕で隠して
智香の示す指先を追った。
「あぁ、移項した後からおかしいね、ここ」
「うーわほんとだ。あれ、でもそうすると…」
ん?と首を傾げ、赤ペンで空に文字を書く仕草をして暫く考えていた智香が
ちら、と私を見る。
「わかった?」
「ちょっと途中式見せて貰っていい?」