放課後ハニー
「っていうかなんでメアドなんか教える訳。私が相模にメールすると思う?」
「ん?電話番号のが良かった?」
「もっと要らない!」
「友響ちゃんのメールとか素っ気なさそうだよね。デコメどころか絵文字もないくらいの」
「そんな話してないわ!」
「じゃあどんな話ならいい?」
あぁもう、ほんと苛立つ。無限ループなんてもんじゃない。
どんな話もきっとこうやって
まともに噛み合わず掴めずサラサラと擦り抜けていく。
「好きな子とメールしたいってのは当然の欲求だと思うけどなぁ」
高校生が呟けば普通に聞こえるかもしれないけど
相模が言うとやっぱり違う。
…この違和感、なんだろう。
「…嘘臭い台詞」
「失礼な。これでも男よ?そういう事だって考えるって」
「相模が好きな女の子なんていっぱいいるじゃない。そういう子相手にしてれば?」
「いっぱいいた所で俺が好きじゃなきゃ意味ないじゃない?」
言いながら違う?と言わんばかりに小首を傾げながら、携帯灰皿で煙草を揉み消して
口角を得意気に持ち上げた。
ふと、朝智香から聞いた告白劇の話が頭をよぎり、
「…へぇ、モテてる自覚はあるんだ」
言い包められそうなのが悔しくて
精一杯の嫌味を洩らす。
「…友響ちゃんて地味に核心突くよね」
「それ褒めてるの?」
「それ昨日の仕返しのつもり?」
「仕返しされる自覚もあるんだ?」
「一応はね。謝るつもりは全くないけど」
しれっと言い放ったその言葉に、まさにぽかんと口を開けた。
開き直りにも程がある。
「…あんたほんっとムカつくわ。吸い終わったなら『お仕事』に戻りなさいよ」
ありったけの憤慨を込め、屋上の地面に吐き捨てた。
なのに、気分が晴れない。
言いたい事言ってるはずなのに、晴れていかない。
相模は今、どんな顔をしているのだろうか。
「謝ったって友響ちゃんはムカつくでしょ」