放課後ハニー
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その日はテスト期間の2日目だったけど、私はいつものように屋上にいた。
5時のチャイムの少し後。
本の代わりの参考書からふと目を上げた瞬間の空が、なんていうか凄い色をしていて
思わず見惚れていた、そんな時に
私以外、開く事すら知らないはずの扉が開いた。
「…あれ?」
頓狂な声を上げて白衣姿で現れたのは、入院した物理教師に代わって臨時で授業を受け持つ人気教師。
「相模…先生…」
私はぽかんと口を開けて
頭を巡る『何故』が覚えたての英単語を押しやるのを感じていた。
こんな所にどうして来るんだろう。
相模大輔。確か…27歳。
目を引くその容貌から、男女問わず人気がある。
けど、私はなんか気に入らなかった。
『いい顔』っぷりが完璧すぎて、嫌悪感にも近い感情を抱いていた。
何よりここに立ち入っていいのは―。
5m程の距離で交わる視線。
何か言ってやりたくて、だけどまさかの事態に何も言葉が出てこない。
むしろ鍵が壊れていることがばれたら
ここに来ることが出来なくなる。
そんな事ばかり考えていると
「あぁ、橘友響ちゃん」
相模はまさかのフルネームに『ちゃん』付けで私を呼んだ。