放課後ハニー
「―は…?」
なんなのこいつ。
胡散臭い。
「だよね、3Aの」
「はぁ…」
曖昧な私の返事にも何を言うでもなく
相模はその場で煙草に火を付け、校庭が見える私の方へとやってくる。
「あの、相模先生」
「ん?」
「なんで屋上に?ここ立ち入り禁止って知ってるでしょ」
私の頭の横で、『危険!』と書かれたプレートが風に舞って、僅かな自己主張をした。
「え?だって君入ってるじゃない」
「それは屁理屈」
「んん~?…あぁ、そういう事。たまたま4階の廊下で君が屋上への階段を昇っていくのを見ただけだよ」
相模は私の左隣でフェンスに手を掛け、煙草の煙を吐き出す。
ふわりと漂ったその香りがやけに鼻について、胡散臭さに加えて苛立ちが芽生えた。
君が、って言ったな…
私だと認識してここに来たのか…
でもなんで?何のために?
「先生もしかして説教するつもり?」
「あー、『相模』でいいよ。友響ちゃん」
「は!?」
私の台詞を丸っきり無視して、馴れ馴れしく人の名前を呼ぶ。
なんなのこいつ?意味わかんない…
私はあからさまに顔をしかめて相模を睨んだ。
「そぉんな睨まないでよ。あ、こないだの実験のレポートよく出来てた」
「…そりゃどーもっ」
「あんな風に書ける高校生見たの初めてだよ。以来名前も顔も覚えてて気になってたんだ」
なんだか妙にちぐはぐな会話をしてると思う。
私が気になってるだって?
気にしてたら、私の質問にくらい答えるだろうに…