放課後ハニー
「…ここの鍵、私が2年半前に壊したの」
妙なそれを押さえ込んで、視線を合わさないように呟く。
「…へ~ぇ。案外やんちゃなことするんだね。しかも2年前ってまだ1年生だし」
「そんな優等生に見える?」
「割とね。特に理系の成績は抜群だし…眼鏡だし」
「眼鏡は関係ないわ…」
「そう?じゃあ…なんでまた?」
「だって折角都内の高台にあるのに屋上立ち入り禁止とかふざけてるじゃない」
膝に乗せていた単語帳を閉じて地面に置き、口を尖らせると
上から「ぷっ」と吹き出す声が聞こえた。
「あははっ!そんだけの理由?」
「そ…そうよっ。何?いきなり笑い出して…」
「自由だなー友響ちゃん。若いからかなー」
若い、なんて言われてちょっとムッとしたけど
いちいち腹を立てるのも癪だから、と、顔に出すだけで留めて
ひとしきり笑って息をついた相模は、再び『いい顔』に戻っていた。
この顔、嫌い…
「相模」
「ん?何?」
大人の狡さが滲んでいるよう…
「…なんでもないわ」
「あ、今呼んでくれたね。相模って」
…やっぱ訂正。
「あんたムカつくわ」
「いきなり何故っ?」