放課後ハニー
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「…そのまま夏休み直前から付き合い始めて…いわゆる公認の仲ってやつになったくらいだったのよ」
先程までのしゃくり上げていたのが嘘のように、滑らかに言葉が流れ出る。
少し誇らしげな口ぶりになっていることに気付き、何故だか微笑んでしまいそうになった。
「ふたりして理系が得意で、進路は情報処理か物理学か建築もいいねって話して。
私は帰宅部だったから、基哉が部活してる間は図書室で勉強して、夕方頃に屋上に上がって
基哉を見てたの。部活終わると基哉も来て、サッカー部がない水曜日はそれを一緒にするかデートするかだったけど」
「それが約束?」
「そう。以来放課後の屋上は誰も来なかったしね。2年になってから大学も決めて、一緒に頑張ってた」
こくん、と紅茶を喉に流し入れ続ける。
「付き合って1年ちょっとって頃。ほんとに…突然。いつもみたいに部活の練習が終わって、
屋上でちょっと一緒にいて、ふたりで電車に乗って…先に基哉の降りる駅に着いて、また明日って…」
「…うん」
「で、私も家に着いてから基哉にメールしたの…それも約束だったんだけど…返信がなかったの」
その日のことも、よく覚えてる。
携帯が止められたなんて話も聞いてなかったし、どうしたのか気になって
12時を回っても携帯が鳴る気配もなく、眠ることすら躊躇う程だった。
「それでもなんとか寝て、朝方うとうとしてた時に携帯が鳴ったわ。メールじゃなくて着信。
おかしいと思って出てみたら、基哉の…お母さんでね…事の詳細を知った、の…」