放課後ハニー
屋上を後にして階段を降りる途中で再び声が掛かり
私はそちらを振り返る。
「何?」
「私は、大事な人亡くしたこともないし学校の先生とどうかなったこともない」
階段の途中で追い付いた智香が突然言い出すことに
戸惑いながらも「うん」と返した。
「だけど、友響がここに来る理由は…市倉くんとの約束があったってだけ?
それに固執して他の理由、知らない振り?」
智香の瞳がまた揺れる。
それでも懸命な表情で、私のことをじっと見据える。
約束に固執してる…?
他の、理由…?
「ちゃんと見なよ。でもって気付きなよ。本当に嫌だったら…友響は最初から拒絶する」
本当に嫌だったら…
最初から…?
「以上!先月友響の告白現場を見たことある智香サンからの意見でした!」
そこまで聞いて、思い当たる節がないこともないのに気が付いた。
次の瞬間、智香はちょっと顔を赤らめて
「お先!」と言いながら階段を駆けていく。
「ちょっと…智香!?そんなの見てたの!?」
私もすぐ後を追い掛け尋ねた。
「いやぁ~…なんか私そういうのよく見かけちゃうんだよね~」
「だからって…悪趣味!」
「し~らな~い」
教室がある2階に着くと、智香がくるりと振り返る。
得意気な笑みを浮かべ、
「どうにかなったらちゃんと報告するんだよ!?」
と、念を押す。
私は軽く両手を『お手上げ』状態にして
「…了解」
観念したように呟いた瞬間、本鈴が鳴った。