放課後ハニー



「…あんたムカつく」
「この状況でそういうこと言うの?」
「ほんっとムカつくわ」
「容赦ないなぁ…」
「でも…」


腕の力がふっと抜けて、相模と向かい合った。


「でも?」


『いい顔』した教師面を微塵も感じさせない
ひとりの男の顔をして
相模はちょっとだけ首を傾げる。

私は相模お得意の唇の端を持ち上げるような笑みを作って


「…嫌いじゃないわ」



そう言い放った。


トン、と相模の胸を押し、預けてた身体をそっと離す。
マグカップを手に取ると中身はすっかり冷めていて
それでもほんのり甘いアップルティーは美味しいと思った。



「嫌いじゃない、ねぇ…」



クックッと肩を震わせ相模は笑う。


「…何よ」
「いや、悪くないよ」
「悪くないって何」
「そのままの意味だけど?」



私が真似てみたのよりずっと意地の悪い笑みを浮かべて
それでも瞳は優しかった。


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