放課後ハニー


「折角だからふたりが出逢った場所で渡したいって思ったんですけど…
絶対教えてくれなかったんです。いつか先輩から聞けたらって思ってたけどそれも出来なくて…」


鞄から出した手の上には
真紅のリボンがかけられた小さな黒い箱。
金色のシールには『Happy Birthday』と綴られている。


「俺が渡していいのかわかんないですけど…お誕生日おめでとうございます」


不器用な笑顔で、森見くんはその箱を私に差し出した。

基哉からの誕生日プレゼント。
まさかこんな形で
私の元にやってくるなんて思ってなかった。



「…ありがとう……」


真四角の箱が揺れて歪む。
1年越しのそれを森見くんの手ごと包んで


「あり…が…と…」


もう一度、感謝を告げた。



「先輩…」
「嬉…し…」



…ねぇ基哉。





ずっと止まったままでいいと思ってた。
そうすればずっと基哉を傍に感じていられると思ってた。

でも

そんなのおかしいよね…


ムカついてただけの人からそれを教えられて
基哉が残した相合傘の存在を知った。
思い出すからと目を背けていた後輩から
基哉が残した贈り物の存在を知った。


何も気付かない私に一番焦れていたのは

基哉だったんだね…



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