放課後ハニー
「…森見くん」
縋るように握っていた彼の手を離して
手の中に箱を納めて彼を呼んだ。
「私ね、忘れないよ。基哉のこと」
「え…?」
「ずっと忘れない。だから、私の中で、一緒に成長させていく」
涙を拭うことも忘れ真っ直ぐに森見くんの目を見据えた。
すると彼は、ちょっと困ったような表情をしたけど
それはすぐに笑みに変わって
「敵わないなぁ」
笑い声と共に言った。
「ほっぺ、叩いてごめんなさい。痕になったりしてないですか?」
「大丈夫。私も叩いたしお互い様。それじゃ、練習頑張ってね」
「先輩も。受験勉強頑張って下さい」
「ありがとう」
「それから俺も、忘れないです。絶対」
心なしか潤んだ彼の瞳も真っ直ぐと私を見据えていて
その様子には頼もしさすら感じる。
弟でも見るような気分になって、思わず頬を緩ませた。
「じゃ、俺行きますね。ご馳走様です」
「うん。またね」
背を向けようとする彼に手を振って
部室に向かう姿を見送ろうとしたその瞬間
「あ、」
不意に彼は振り返った。