王様彼氏とペットな彼女!?~Heart Breaker~
「アユちゃんも健気だねぇ。俺が女だったら壱星なんて絶対に嫌だけど。確かにさ、顔はそこらの男とは比べ物にならないけど性格が……ねぇ?」
「小野君はいい人だよ?」
「ちょっと、アユちゃん。壱星に洗脳されちゃった?」
「洗脳なんかじゃないよ」
「いや……俺には洗脳としか……」
彰人君はクスクスと笑った後「でも……」と付け加えた。
「あいつを落としたアユちゃんはたいしたもんだよ。どうやって落としたの?」
「へ?」
「壱星って今まで特定の彼女ってつくったことないから。ほら、壱星って不器用じゃん?そんなもんまで買って来いって彼女に命令するなんて、度が過ぎるけど」
彰人君はあたしの手元のコーヒーに視線を移す。
「でも、壱星はアユちゃんが好きすぎて、どうやって接したらいいかよく分かってないんだよ。だから多少のことは大目に見てやって?」
「……小野君があたしを好きすぎて?」
期待を込めて聞き返すと、彰人君は大きく頷いた。
「そう。あいつ、いつもアユちゃんのこと目で追ってるじゃん。傍から見たら、あいつの気持ちなんてバレバレだよ」
小野君がいつもあたしを目で追ってる……?それって、本当?
……どうしよう。嬉しい。
嬉しくて、顔がニヤけちゃう!!
「とにかく頑張れよ」彰人君はそう言うと、あたしの頭をポンッと叩き教室に戻って行った。
「小野君が……あたしを好き?好きすぎて……どう接したらいいか分からない?」
ムフフ……。どうしよう……顔が緩んじゃう。
体中で喜びを表現したいけど、ここは学校の廊下で。
もしここで騒いだら、周りの人から変な目で見られちゃう。
そうじゃなくても転校してきたばかりで人の注目を嫌でも集めちゃうし。
あたしはグッと缶コーヒーを胸に抱きしめると、ニヤニヤしながら教室に向かった。