王様彼氏とペットな彼女!?~Heart Breaker~
「ちょっと用事思い出したの。だから帰る」
「嘘つくな。だったら、何で泣きそうなんだよ」
「泣かないよ」
小野君の前では絶対に泣かない。
あたしが泣いたらきっと、小野君はあの人じゃなくてあたしを選んでくれるでしょ?
だからこそ、泣かない。
涙で小野君を引き止めるのは少し卑怯な気がするから。
「……ごめんね、今日はすごい楽しかったよ」
ニコッと笑うと、小野君の手があたしの腕からするりと離れた。
……それが小野君の答えなんだね?
分かってたけど、やっぱりすごく悲しいよ。
「じゃあまたね」
「おい!ちょっと待て……――!」
勢いよく走り出すと、小野君の声はすぐに周りの喧騒にのまれ聞こえなくなった。