王様彼氏とペットな彼女!?~Heart Breaker~
「どこ見て歩いてんだよ」
「あ……ごめんごめん!!」
歩道を越えて車道にはみ出して歩いていたあたしに、容赦なく車のクラクションが鳴らされる。
その音に思わず体をビクリと震わせると小野君はあたしの肩を掴んだ。
「お前はこっちにいろ。フラフラして目障りだ」
小野君は車道側に立つと、何事もなかったように歩き出した。
「ねぇ、小野君」
「何だよ」
「あたしね、小野君のそういうさりげないところ……すごくいいと思うよ」
「そういうところって何だよ。意味が分からない」
口は悪いし、ぶっきら棒だけど……小野君は温かくて優しい心を持っている。
だって、ほら。今もあたしの歩幅に合わせてくれてるでしょ?
さっきから歩きやすいと思っていたけど、小野君は歩きづらそう。
友達との約束をキャンセルして、あたしを送っていってくれる小野君。
「ん?小野君のさりげない優しさがいいなってことだよ」
「優しさがいいって何だよ」
小野君は突然ピタリとその場に立ち止まり、あたしを見つめる。
もしや、小野君。自分が何を褒められてるか分かってない?
ちゃんと説明したほうがいいのかな?
「んー……、だからね、車道側歩いてくれたり、あたしに歩幅を合わせてくれたり。そういうところがすごくいいと思って……」
「だから、その『いい』っていう意味が分からない」
どうして小野君は「いい」という言葉にこんなにも執着するんだろう。