王様彼氏とペットな彼女!?~Heart Breaker~
「どこに引っ越すか聞いてないのか?」
「……うん。まだ怖くて聞けない」
「そうか」
二人の間に重たい空気が流れる。
すると、突然小野君がその場にピタリと立ち止まった。
「小野君……?」
「ずっと話聞いてやれなくてごめんな」
小野君はあたしの目を真っ直ぐ見つめてそう言った。
「え?」
「そんな大事な話、聞いてやれなくてごめん。でも今は、お前がいなくなるとか考えられない」
ギュッと唇を噛み締めた小野君を見て、胸が締めつけられる。
ねぇ、小野君?
あたし、小野君をなんとなく理解できた気がするよ。
小野君は無口で冷たいけど、それ以上に温かくて優しい心の持ち主なんだ。
でも、口に出したら絶対に嫌な顔をされるから胸の中にしまっておこう。
小野君に手を引かれて廊下を歩いていると、いつの間にか涙は乾いていた。