王様彼氏とペットな彼女!?~Heart Breaker~
「お前って何でそんなに鈍くさいんだよ」


プリントを職員室まで運ぶ途中、何の障害物もない廊下で派手に転んだ時、小野君はスーパーマンみたいに突然あたしの前に現れた。


そして、うんざりした表情を浮かべながらも床に散らばるプリントを拾い集めてくれた。


「小野君、ありがとう」


「転んでぶちまけるくらいなら、最初から一人で運ぶんじゃねぇよ」


「……じゃあ、もし手伝ってってお願いしたら、一緒に運んでくれた?」


恐る恐る尋ねると、小野君はプイッとあたしから顔を反らした。



「これからは転ぶ前に言え。いつも危なっかしいんだよ」


ってことは、……あたし、小野君を頼っていいの?


小野君はあたしのお願いを聞いてくれるの?


……あたしが小野君の彼女だから?



その時、ふと思ったんだ。


転校してきてからの一週間、どうして小野君と目があったのかって。


もしかしたら……。


それはあたしの勝手な自惚(うぬぼ)れだけど、小野君があたしを見ていてくれたのかもしれないって。


転んだ時にすぐに駆けつけてくれたのは、小野君に予知能力があるからじゃなくて。


もちろん、スーパーマンでもなくて。


コッソリとあたしを見ていたから、すぐに駆けつけられた。


……って、それはあたしの願いが込められてるんだけどね。



でも、小野君は「いつも危なっかしい」って言ってくれた。


ねぇ、小野君。


「いつも」って言った小野君の言葉信じていいよね?


小野君があたしを見ていてくれるなら、食堂でパンを買ってくるなんてお安い御用だよ。

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